縁は異なもの味なもの(後編)…美月

千葉県市原市にある養老渓谷から梅ヶ瀬渓谷に向かう途中に梅ヶ瀬茶屋駐車場がある。

紅葉の頃なら色とりどりの車で賑わう駐車場も、季節外れともなると鳥の囀りが耳元で聞こえるほど長閑な田舎暮らしです。

仕切りのないに駐車場に車を止めて観光案内板を見ながら恒例の写真を撮る。

花とおじさん、キリスト看板、犬のフン禁止板、おもしろネタシリーズと中年カップルでありながら写真を撮る楽しみに事欠かないのは幸せなことだよね。

笑いを一通り写真に収め、いざ出発という時に目の前に赤い実をいっぱいにつけた大きな木を発見。

早速、樹木図鑑で調べてみることにした。

スカイラインには、以前、先生が買って揃えてくれた野鳥、野草、樹木と三種類の図鑑が載せてあります。

でも、似たような植物が沢山あるので、よし、これだ!と確定するまでに至りません。

…なので、見た目と匂いで美味しそうな果実があっても、「食べちゃダメ!」と先生に止められてしまうのですが、やっぱり身をもって経験しないとなかなか覚えられませんね。

「ヤマモモですよ」

「それはヤマモモの原種で、ヤマモモより酸っぱいけど食べられますよ」

駐車場前にある茶屋から、こちらに向かって一人のおばあさんが歩いてきました。

ゴミ捨てに出てところ、私達の声に気付き声をかけてくれたそうです。

おばあさんは、こちらの茶屋にお住まいで、以前はお蕎麦屋さんだったと聞きました。

ご主人は東京で定年まで勤め上げ、三人の子供達を終えてから、この地に住んで30年経ったそうです。

まさに、人生の楽園の実写版ですが、2年前にご主人が亡くなってからは一人でお住まいだと言っていました。

お一人では寂しくないのかな?と思い、お子さん達のことを尋ねると、

春休み、夏休み、お正月ともなると、子供達が孫を連れて泊まりにくるので賑やかですよ…と言っていました。

でもね、人間の数よりイノシシ、シカ、猿の数の方が上回る土地で、おばあさん一人では心細くはないのかと、少々心配になったのですが…。

ヤマモモ原種は、このまま食べると酸っぱいのですが、焼酎に漬けると真っ赤に色付き綺麗なお酒になると教えてくれました。

見知らぬ土地で店を構えた当時は、蕎麦屋というより近所の人の酒場となったそうですが、隣の家まで車なしではいけない場所に、東京から来た夫婦が店を出すなんて珍しかったのでしょうね。

毎日、近所の人が来ては酒を飲んでは賑やかなひと時を過ごしていたそうです。

おじいさんの話をするおばあさんはとても楽しそうで、今でもご主人がすぐ傍にいるような、優しさを感じました。

辺りを見渡せば、人工的に植えられた樹木が季節ごとに楽しめるように並んでいました。

食べられるものから、四季を愛でるもの、それぞれの木、一本一本にたくさんの思い出が詰まっているんでしょうね。

定年過ぎて、終の住処となるこの地に来ることに不安はなかったか?とお聞きしたところ、

おばあさんは躊躇うことなく微笑みました。

なんとなくですが…

その微笑みは、私にではなく、風となりおばあさんに寄り添うおじいさんに向けられたように思いました。

日本昔話ではないけれど、おじいさんとおばあさんが二人仲良く暮らしていただろうことは、おばあさんの陽だまりのような暖かさで感じることができました。

幾つになっても女性が美しくいられるのは愛されている心の豊かさからでしょうね。

ここで前回の記事に書いた怪しい男女が出てくるのですが、一つの出逢いにより人生は大きく変わるものだと思いました。

お互いの存在を大切に思えることがどれほど幸せなことか…

先生と出逢い、人を愛せることの喜びを教えられて、私自身のことも少しわかるようになりました。

私は一人上手ではなかったのかもしれません。

愛する人を失う哀しみ以上の苦しみはないと思いますが、涙が止め処もなく溢れ、死を憎み、この世の無情に心引き裂かれても、春に芽吹き花を咲かせる樹木のように、人もまた強くなれる。

愛があれば、愛さえあれば、再び逢えるその日を怖れず、日々を穏やかに迎えられるのだと思いました。

美月

追伸…

翌日、ヤマモモを貰いに、再びおばあさんの家を訪ねたのですが、おばあさんは居ませんでした。

おばあさんの家の敷地に建てられた案内板には、イノシシ、シカ、猿とともに、にっこり笑うタヌキも描かれていました。

もしかしたら?
あのおばあさんは…⁇

まあ、人間であれタヌキであれ、先生と私には関係ないことなのですが…

だってね、何気ない出来事も感動という真実として作り上げてしまうのは、先生と私のもっとも悪い癖なのですからね(^^)

縁は異なもの味なもの(前編)…美月

先生も書いてくれたけれど、本当に様々な出会いがあったなぁ・・・。

おサルのお尻は赤かったし、子鹿のバンビちゃんの背中の斑点は純潔の象徴のように輝いていた。

久留里駅前で水を汲む怪しい男女は、「神秘の水 月のしずく」というブランド水のペットボトルを大量に持ってきていたんだけどね。

一本だけでも怪しいボトル…(^^ゞ

そもそも「神秘の水」と書いていること自体、怪しい匂いがプンプンするけれど、
そんな高価な水の空ボトルを100本以上持っているのは不思議だよね。

すぐにインターネットで調べてみると…

月のしずくは、弘法大師にゆかりの深い、高野山麓「神野々」の里に湧く地下水「金水」と、さらに深層1,187mより湧き出るミネラル豊富な温泉水「銀水」をバランスよくブレンドしたミネラルウォーターです。

このお水がもたらす恵みは、私たちの想像をはるかに超えるものがあります。
科学的にも明らかになりつつあるこの“生命を育む水・生きた水”を丁寧にボトリングし、お手元にお届けします。

…と書いてあった。

ちなみに2リットル×6本で4800円と商品価値がわからない者にとっては高額だけど、
お布施もカルチャースクールの授業料も他力を必要としない人には無駄遣いになるのかな!?

だけどね…この水を汲む60代らしき水商売風のオバサンの人相の悪いこと。

この人が良い人であったなら、私は丸坊主になってもいいくらいの悪人顏です。

そして、オバサンの手伝いをする、真っ黒に日焼けした頭の悪そうな感じのオジサンの顔も決して世間受けするタイプではない。

こんな悪のツートップが炎天下で久留里の生きた水を必死になって汲んでいるだけで事件のような気がするけど、先生と私…言葉を交わす前から一連の流れが映像化されて見えてきた。

本物と称して偽物を売る…。

もしくは詐欺の餌として人脈を広げる材料となるのだろうなぁ…。

まともな人であれば、中身が違えばペットボトルの張り紙を剥がすのが普通だと思うからね。

う〜ん、もう少し時間に余裕があったら後を付けていきたいところだったけど、
楽しいことが盛り沢山の東浪見時間が待っているから今回は見送りました(見逃してあげました)

ちなみに…都会にいたら間違いなく尾行していましたよ。

過去、どれほど見知らぬ人の後を追いかけて歩いたことか!?

えへへ、私達は誇り高き妄想ハンターです(^^♪

つづく…

紅殻格子の日記(169)  出逢い

紅殻格子の日記(169)  出逢い

今週の土日はいつもの通り、美月と東浪見でのんびりと過ごす予定でした。

しかしいろいろな出逢いが多過ぎて、逆に頭をフル回転させなければならなくなった次第です。

その詳細については美月がしっかりと書いてくれると思います。

水汲み詐欺師に始まり、房総半島の林道を真っ赤なスカイラインで突っ走り、野生の猿や鹿を轢きそうになったり、山奥の感動秘話に涙したり、真夏の虫取り少年に戻ったり・・・

とにかく週末は楽しさ盛り沢山なので、その落差から月曜日は半分死んでいる状態です。

人生の豊かさとは何かを考えさせられる旅でしたね。

誰にも平等に与えられた一日ですが、それを如何に濃密に過ごせるかで人生の豊かさが変わります。

私と美月はほぼ同等の感性を持ち合わせているので、久留里駅前で水汲みをしている男と女を見ただけで、一話の短編小説をつくれるほど妄想を闘わせることができます。

出逢う人々の人生を勝手につくりあげて、その妄想に二人で涙を流すほどですから、永遠に会話は尽きることがないと思います。

それは人生で最も幸せなことです。

誰も知らないことですが、二人の濃密な時間は私の人生を豊饒にしてくれました。

山中で野生の若鹿が車の前をいきなり横切った時、その美しさが瞬時に詳細なまでに脳裏に刻まれます。

筋肉の躍動と鮮やかな白い斑紋・・・二人で深くため息をついて「綺麗だね」と感動できる喜び・・・
美月といる人生は理想です。

おそらく私は真剣に勝負できるライバルを探していたのかもしれませんね。


逢瀬に向かう車窓から…美月

空一面薄曇りの朝、電車内も多少どんよりしているけれど、自らの意思で出かける人はハッキリとわかる。

行きたくないのになぁ~と、仕方なくスケジュールに引きづられる人にとって、雨は憂鬱な気分を高めるにはもってこいの材料だけど、雨を待つ人も多い季節、譲り合いの気持ちが大切ですね。

毎日、遺影に手を合わせる仕事をしていると、当たり前の毎日ないのだとつくづく感じます。

だからこそ、

やりたい事をやれ!

心残りの数を減らせ!

…と、息巻いていた40代と違い、50代ともなると今日も穏やかに暮らしたいなぁ~と朝の通勤ラッシュ時に思う。

それでも帰りの電車の中では、はぁ~一日色々あったなぁ~と疲れを引きずって帰るのだけど、そんな時にも先生からメールが届くと気分が上向くんだけどね。

これを私は「救い」と呼んでいるけど、最近はペットに癒される人も多いよね。

うちにもペットがゴロゴロいて、必要以上に長生きで巨大な亀三匹、イケメンなのにコミ症、でも可愛いレップというパンダ柄のウサギがいて、二匹の犬がいる。

まあ、どの子も可愛くない訳ではないけれど、世話するのを大変だと思うのだから、心から愛情を注いでいる訳ではないのだろうね。

こんな話を書くと、

「俺なんてどれだけ大変か!!!」

…と、耳の中で先生の言葉が木霊しているけれど、確かに相手が何であれ、生き物と伴に生きていくのは大変なことだと思う。

それでも人は愛を求め彷徨うのだから矛盾しているよね。

この矛盾こそが人間らしさなんだろうなぁ(^^)

えへへ、何でこんな流れになったかというと、先日、先生からもらったメール(お題)のAI人工知能について考えていて、どう考えてもAIの方が分があるように感じた。

でね、人間とAIのもっとも違うところは何かと考えたら、矛盾なんだろうと思った。

人間は矛盾をはらんだ生き物であり、パワハラ議員の迷言ではないけど、殆どの人間は表と裏の顔を持っていて、同じ人間だから矛盾を理解できるのだと思った。

そう思うと、人と深く付き合いたいのであれば、裏の顔にも惹かれないと本当にその人を愛しているとは言えないのだろうね。

犯罪者を肯定する訳ではないけれど、悪い人だとわかっていても離れることができなかったという理論は間違っていないように思えてくるよね。

んっ!そうなると先生がどれほどの偏屈者であっても、飽きることなく惹かれ続けているのは、私もまた偏屈者だからということになるのかなぁ⁈

まあ、何でも一緒は、仲が良くていいでしょ(^^)
美月

追伸…ブログ記事が雨で始まり、最後は偏屈者同士の傷の舐め合いに話題が流れるあたり、自分でも恐ろしくなるほど支離滅裂だね。

二時間ドラマの帝王の妻が語る恐怖同様、

まるで…サスペンスみたいだね( ^ω^ )





毎日、毎日…美月

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プロフィール

不良老人カップル

Author:不良老人カップル
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(♂) 紅殻格子(べんがらごうし)
1962年8月23日生まれ。
某大手企業に勤めながら官能小説を雑誌に発表する兼業作家。ブログ『妄想の座敷牢』を主宰するも、2012年、妻を亡くし、また自身も食道癌に罹り、文筆活動をしばらく停止していた。

(♀) 美月
1962年8月23日生まれ。
3人の子供と夫を持ちながら家業の役員を務める兼業主婦。ブログ『灰になるまで恋を』を主宰。 偏屈な紅殻格子と10年に及ぶ愛人関係を続けられる自身もまた偏屈で変わり者。
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