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紅殻格子の日記(186)  裁き

紅殻格子の日記(186)  裁き

先日、社内のエレベーターに乗り合わせたSさんが珍しく私に声をかけてきました。

Sさんは私より五つ六つ年上で、還暦を迎えたであろう女性です。

部署が違うのでそれほど親しくはありませんが、お互いに本社で三十年以上生き残ってきた古参社員の顔見知りです。

「紅殻さん、子供さん達はみんな手が離れたの?」

「いえ、上の二人は就職して家を出ましたが、まだ三男が大学を浪人して家に居ます」

「そう・・それならいいわね・・・私は人生の方向性を間違っていたみたい」

そんな話をしたこともない人からいきなり切り出されて、しばらく会社の廊下で立ち話につきあうこととなりました。

「奥さんや子供、孫がいる同年代の人は、守る存在があるから還暦を過ぎても生き生きと働いているわ。でも私には誰かのために生きるという目的がないの」

「・・はあ」

私が勤める会社では、六十歳を過ぎると形だけは定年となりますが、六十五歳まで契約社員のような立場で働くことができます。

仕事はそれまでと余り変わらないのに、給料だけは大幅に減らされてしまうため、モチベーションがかなり落ちてしまうと言う話は聞いていました。

そしてSさんはずっと独身で過ごしてきており、話の筋から考えると、今は還暦を過ぎて一人で暮らしているのだとわかりました。

つまりSさんは仕事への意欲を喪失し、同時に老後独りぼっちになる不安を抱えているのだと想像できました。

「でもSさんは昔から趣味を謳歌していましたよね。まだまだやりたいことがいろいろあるんじゃないですか?」

「ううん、だから方向性を間違ってきたと言うの」

結構美人でナイスバディなのですが、三十年も前から一人でインドやネパールを旅行するような女性でした。

当時、若い人達はみんな結婚して子供ができて生活に精一杯でしたから、いつまでも独り者で遊び周っているSさんを羨ましくも腹立たしく思っていました。

アリとキリギリスです。

そのキリギリスの代表選手みたいなSさんが、その人生を間違っていたと後悔しているわけです。

しかしみんなが憧れるほど自由奔放に生きて来たSさんの敗北宣言に、私は馬鹿じゃないかと腹が立ちました。
キリギリスの結末は童話からも明らかです。

キリギリスになることは、独りぼっちの野垂れ死にも含めて、当然そこまでの覚悟があって実践できるわけです。

偽のキリギリスは自分の過去も否定してしまうため、結局人生全てが不幸になってしまいます。

しかし本物のキリギリスは不幸な末路であっても、過去の楽しさを最期まで宝石のような輝きとして心に刻んでいるはずです。

それに自分が生きるモチベーションのために、家族や子供をを求めるのは幼稚過ぎると思います。

「頭が悪いんだよ」と私は心の中で呟き、長くなりそうな話を途中で切り上げました。

さてさて、現在独身の皆様、還暦後の独りぼっちは相当堪えるみたいです。

結果はわかっているのですから、早目にいろいろな手を打った方がいいと思いますよ。


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プロフィール

不良老人カップル

Author:不良老人カップル
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(♂) 紅殻格子(べんがらごうし)
1962年8月23日生まれ。
某大手企業に勤めながら官能小説を雑誌に発表する兼業作家。ブログ『妄想の座敷牢』を主宰するも、2012年、妻を亡くし、また自身も食道癌に罹り、文筆活動をしばらく停止していた。

(♀) 美月
1962年8月23日生まれ。
3人の子供と夫を持ちながら家業の役員を務める兼業主婦。ブログ『灰になるまで恋を』を主宰。 偏屈な紅殻格子と10年に及ぶ愛人関係を続けられる自身もまた偏屈で変わり者。
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