紅殻格子の日記(173)  『野良猫』 第六章

紅殻格子の日記(173)  『野良猫』 第六章

それは七年前のことになる。

久しぶりに街で再会した中学校の同級生からの誘いを断れず、麻美は週末にセッティングされた合コンに出るはめに陥った。

昔から他人とは群れず、友達など吐き気がするほど嫌いな麻美だったが、高校を中退した自分が正業に就いていることを、少しは自慢したい気持ちがあったのかもしれない。

処女は十五歳の春に捨てた。

相手は碌でもない暴走族の男だった。

グレて男達の家で寝泊まりするようになったが、今で言うバツイチだった母親は、それをいいことに、年甲斐もなく男をボロアパートへ連れ込むようになった。

母親はキャバレーのホステスで、時折麻美が家に戻ると、だらしない下着姿のまま男と酔い潰れていた。

路地裏のあばら家からも追い出された野良猫、それが麻美の少女時代だった。

男達に餌を貰うため、麻美はまだ熟し切らない裸身を差し出した。プライドも抵抗もなかった。

戦後、夫を失った未亡人が生きるために、米兵のオンリーに身を落としたのと変わらない。

それが野良猫の知恵と思った。

だが二十歳の頃、ヤクザな男にソープランドへ身売りされそうになり、初めて軽蔑する母親と同じ穴の狢であることに気づいた。

(本当の野良猫なら・・)

それは自分の力で生きられる力をつけることだった。

麻美は小さな工務店の事務員として働き始めた。

母親から独立して、アパートの部屋を借りて新しい生活を始めた。

帳簿のつけ方も知らなかった麻美は、会社が終わってから自費で簿記学校に通って勉強した。

男関係は一切裁った。初めて学ぶ喜びを麻美は知った。

すると経理の仕事が面白くなり、社長の信頼を少しずつ得られるようになっていった。

(私を信じてくれる人がいる)

それが自堕落だった自分には誇らしく、合コンに参加する勇気を麻美に与えたのかもしれない。

つづく…

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プロフィール

不良老人カップル

Author:不良老人カップル
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(♂) 紅殻格子(べんがらごうし)
1962年8月23日生まれ。
某大手企業に勤めながら官能小説を雑誌に発表する兼業作家。ブログ『妄想の座敷牢』を主宰するも、2012年、妻を亡くし、また自身も食道癌に罹り、文筆活動をしばらく停止していた。

(♀) 美月
1962年8月23日生まれ。
3人の子供と夫を持ちながら家業の役員を務める兼業主婦。ブログ『灰になるまで恋を』を主宰。 偏屈な紅殻格子と10年に及ぶ愛人関係を続けられる自身もまた偏屈で変わり者。
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