ご心配かけました…美月

昨日は一日あらゆる感情が複雑に蠢いて、気持ちを平行に保つのが大変だった。

朝、先週末に伺ったお客さんとのトラブルから始まった。

この人は病的な異常さを感じる人だから変でもいいんだけどね。

だけど、一つ問題が起こると綱渡り的人間関係はあっけなく崩れるものだとしみじみ思ったよ。

今更ね…過ぎたことを話したところで何もならないことはわかっているけれど、

人を育てる気力の無い人が、年功序列に従って上座に座っているのはおかしな話で、久しぶりに腸が煮えくりかえる思いがした。

長年、先生から会社組織の儚さを聞いて来たけれど、立場が変わって初めて先生の言葉が身に染みる。

そう思うとね、私は先生の憂鬱をちゃんと理解していなかったと反省するんだよね。

だからといって一人で見聞きしたものを、先生に伝えようと思っても、全てをクリアに伝えることは出来ないんだよね。

先生も書いたけれど、私達は離れている時間が長くなると喧嘩になってしまう。

しつこいくらい一緒にいる時間に喧嘩をすることは滅多にない。

だけど世間でいう適度な距離を保ちながら、お互いの存在を尊重してという理想ともいえる関係には、私達は向いていないのだろうと思う。

私が生まれ育った環境は、どこを見ても夫婦二人が並んで立っていた。

会話だって漫才師などへのカッパだと思えるほど息がぴったりで、まるで杵と臼のように収まりのよい呼吸だった。

喧嘩もしょっちゅうだったけれど、それも小さなことでね…でもね、みんなすぐに仲直りするんだよね。

商売をしているとね、死ぬも生きるも一緒で、逃げ場のない夫婦二人しかいない世界なのだから、喧嘩しているとお互いに面白くないでしょ。

「ちょっと!!!夕飯の買い物をしてくるから店見ててよ・・・」

喧嘩をすると、殆どの場合、奥さんが買い物に出ていく。

「あら・・・奥さん、こんな時間に珍しいねぇ」

と、普段と違う時間に買い物に出てる奥さんを見つけると、誰もが揃って声を掛ける。

「あれあれ喧嘩してるのかい・・・早く仲直りした方がいいよ」

と、いつも喧嘩ばかりしている魚屋の夫婦が、神の如く・・・諍いの無意味さを説いてくる。

神はあらゆるところに存在し、時に八百屋、豆腐屋と姿を変えながら、夫婦が元の鞘に収まるようにと相手の好物を差し出す。

買物から帰る頃にはすっかり気分も落ち着いて、晩酌用の酒を奮発したりするんだよね。

私の母は可哀想に父と喧嘩をしたことがない。

可哀想にというのは、私は喧嘩をするたび先生のことで頭がいっぱいになって、それは出逢った頃の比ではないんだよね。

だって知り合ったばかりの頃は二人で見つけた世界は少なく、目を逸らせば消せた景色も、今となっては形あるものの殆どが、二人の記憶の中に刻まれているのだからね。

離れれば離れるほど先生が迫ってくるんだもん、仲直りする頃には喧嘩の中身はどうでもよくなってしまうんだよね。

今回、先生と離れている間、なぜ母は喧嘩をしなかったのだろうかと考えてみた。

それは母が良妻賢母だったからでは全くなく、父が特別寛大な男だったからではない。

母は、父と喧嘩をすると死にたくなるほど悲しくなることを知っていたし、父は父で、母が誰よりも悲しむだろうことを知っていただけなのだと思った。

相手の気持ちが分かるというのは、物事の考え方ではなく、相手の気持ちに立てることなのだと思ったよ。

そう思ったらね・・・先生の気持ちがとっても有難かったし、また一つ、喧嘩をしたという想い出が増えたことに気づいた。

でもね・・・生まれてから半世紀を過ぎて残り短い時間なのだから、想い出作りは二人がいいね。

雨降って地固まるというけれど、流れ出た泥の一つぶ一つぶ全てが、先生と私の大切な宝物なのだからね。

美月


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コメント

益城町を中心とした大きな地震に驚いています。
現地の皆様は本当に大変だと思いますが、是非体をご自愛下さるようお願いします。
私と美月は熊本を旅した時、益城町辺りを車でぐるぐる回ったことがあり、沢山の思い出を頂きました。
暗い中で不安でしょうが心より皆様の安全を祈念しております。

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プロフィール

不良老人カップル

Author:不良老人カップル
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(♂) 紅殻格子(べんがらごうし)
1962年8月23日生まれ。
某大手企業に勤めながら官能小説を雑誌に発表する兼業作家。ブログ『妄想の座敷牢』を主宰するも、2012年、妻を亡くし、また自身も食道癌に罹り、文筆活動をしばらく停止していた。

(♀) 美月
1962年8月23日生まれ。
3人の子供と夫を持ちながら家業の役員を務める兼業主婦。ブログ『灰になるまで恋を』を主宰。 偏屈な紅殻格子と10年に及ぶ愛人関係を続けられる自身もまた偏屈で変わり者。
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